「天井から水が垂れてきた」「点検口を開けたら配管が濡れていた」——こうしたトラブルの原因の多くは、保温材の劣化にあります。
本記事では、ビル・施設の空調配管における保温材トラブルの原因・見分け方・対策を、現場経験をもとに解説します。特に、PE(ポリエチレン)保温材では結露が止まらないケースが多い現実と、エアロフレックスやアーマフレックスへのやり替えという根本的な解決策についても触れていきます。
なぜ保温材は劣化するのか?(3つのメカニズム)

① 経年劣化(縮み・硬化・ボロボロ)
PE保温材(ライトカバー・ライトチューブなど)は、年数が経つと最大約2%収縭します。「たった2%」と思うかもしれませんが、これが現場では大問題です。
例えば、10mの直管であれば約20cmもの隙間が生じる計算です。保温材の継ぎ目ごとに5mm〜10mmの隙間が開き、そこがすべて結露の発生ポイントになります。冷媒配管のように表面温度が非常に低い配管では、わずかな隙間でも一気に結露し、天井裏に水滴が溜まる原因となります。
築10年を超えるとPE保温材の表面は硬化し始め、築20年以上になるとボロボロと崩れるケースも珍しくありません。
② 施工不良(工事時点での問題)
テープ巻きが甘い、継ぎ目が空いている、保温材の厚みが不足しているなど、新築時の施工品質が結露の直接原因になることもあります。特に天井裏のように見えにくい場所は手抜きが発生しやすく、竣工後数年で結露が始まるケースもあります。
③ 物理的損傷(天井裏作業での踏みつけ等)
LAN工事や電気工事など、他業者が天井裏に入った際に保温材が踏みつぶされたり、引っかけて剥がされたりするケースが非常に多いです。損傷した箇所は露出した配管表面から即座に結露が始まります。
空調配管と冷媒配管——結露メカニズムの違い

結露対策を考える上で、空調配管(冷温水管)と冷媒配管は分けて考える必要があります。それぞれ配管内の温度帯が異なり、結露のしやすさも対策も違います。
空調配管(冷温水管)の場合
冷水温度は通常7℃前後。外気との温度差が大きく結露しやすいですが、配管温度が一定であるため、適切な厚みの保温材が正しく施工されていれば結露は防げます。冷温水管には一般的にグラスウール(GW)やロックウールが使用されており、冷媒配管のPE保温材とは材質も劣化メカニズムも異なります。GW保温特有の結露トラブルと対策については、別記事で詳しく解説予定です。
冷媒配管の場合
冷媒配管は空調配管よりさらに厄介です。冷房運転時の液管の温度は状況によって変動し、表面温度が露点以下になると一気に結露します。特にPE保温材は冷媒配管の温度帯に対して断熱性能が不十分なケースが多く、PEでは結露が止まらないという現場の声は非常に多いです。
冷媒管の被覆(PE)が収縮して隙間ができると、その部分から集中的に結露が発生します。これが「冷媒管 被覆 縮み」による典型的なトラブルです。
保温材の劣化を現場で見分ける方法
目視確認のチェックポイント5つ
- 色の変化:白→黄色→茶色と変色していたら劣化が進行
- 触感:指で押して硬く弾力がなければ交換時期
- 縮み:継ぎ目に隙間ができていたら保温材が収縮している
- 剥がれ:テープが浮いていたり、保温材が垂れ下がっていたら要注意
- 水滴の跡:保温材の表面や下部に水滴の跡があれば断熱不良の証拠
サーモカメラなしで判別するコツ
高価なサーモカメラがなくても、断熱不良は判別できます。
- 手で触れる:保温材の表面が冷たければ断熱不良
- 水滴の跡を確認:配管の下部や天井ボードの裏面に水滴の痕跡・シミがないかチェック
- 湿度計:天井裏の湿度を測定(※結露リスクは環境によって異なりますが、高湿度が続く場合は要注意です)
YES が 1〜2傋 → 部分補修で対応可能
YES が 3個以上 → 全体的な巻き替え工事を推奨
保温材の厚み基準(令和4年改定対応)
令和4年4月1日の改定により、冷媒管の保温厚み基準が変更されました。
冷媒管の保温厚み基準(国交省 公共建築工事標準仕様書)
- 液管:配管サイズを問わず 10mm以上(改定前はφ9.52以下で8mmも可だった)
- ガス管:20mm以上
ここで重要なのは、この基準はあくまで「最低限」だということです。PE保温材で基準厚みを満たしていても、天井裏の高温多湿な環境では結露が止まらないケースは珍しくありません。
改定前の基準で施工された既存ビルは特に注意が必要です。当時の基準では液管φ9.52以下は8mmで良かったため、現在の環境下では保温性能が不足しているケースが多くあります。
近年の異常気象も、想定される機器の使い方よりオーバーな使われ方をし、結露に拍車をかけています。
PE保温材の限界と、エアロフレックス・アーマフレックスという選択肢
現場で多くの結露トラブルを見てきた経験から言えるのは、PE保温材では結露が止まらないケースがほとんどということです。
PE保温材は経年で収縮して隙間ができること、独立気泡率が低下して断熱性能が落ちること、そして継ぎ目からの湿気侵入を完全に防げないこと、
これに対し、エアロフレックスやアーマフレックスといった独立気泡構造の高性能断熱材は、PE保温材の弱点を根本的に解決します。透湿抵抗が高く、柔軟性が長期間維持されるため、結露防止性能が段違いです。
下の画像の黒い被覆がエアロフレックスです。

「PE保温材を巻き直してもまた結露する」——そんな悪循環を断ち切るには、保温材そのものをエアロフレックスやアーマフレックスにやり替えることか、天井内の環境を変えるのが最も確実な対策です。
巻き替え工事の流れと費用の概算

保温材の巻き替え工事は、以下の流れで進みます。
- 現地調査:天井裏に入り、配管の種類・サイズ・劣化状況を確認
- 報告・見積もり:調査結果をもとに、工事範囲と概算費用を提示
- 施工:既存保温材の撤去→配管清掃→新規保温材(エアロフレックス等)の取付け
- 完了確認:施工後最終確認をし完了
概算費用の目安として、冷媒管のエアロフレックスへの巻き替えは、配管の口径や数量・現場の状況によって大きく変わります。天井裏の作業スペースが狭い場合や、配管が入り組んでいる場合は作業時間が増えるため、費用も上がります。
※あくまで弊社の経験上の見解です。正確な費用は現地調査のうえお見積もりいたします。
放置した場合のリスクも知っておいてください。結露を放置すると天井ボードのシミ・カビ発生→テナントクレーム→大規模改修と、対応コストが雪だるま式に膨らみます。早期対応が結果的に最もコストを抑えられます。
結露箇所が増えると、多岐に渡り同じ症状が起きる可能性もあります。
まとめ:定期点検が最大の予防策
保温材の劣化は「見えないところで進行する」のが厄介なポイントです。年に1回でも天井裏を確認する習慣をつけるだけで、大きなトラブルを未然に防げます。
まずはフィルター等の清掃、機器を使用する時の温度の調整を確認してみて下さい。
特に築10年以上のビルで冷媒配管にPE保温材を使用している場合で環境が悪く結露している場合は、エアロフレックスやアーマフレックスへのやり替えを早めに検討されることをお勧めします。 冷温水管やドレン管、ダクト(GW保温)の改修については別記事で解説予定です。
天井内の結露トラブル全般については、天井内の結露はなぜ起きる?配管別の原因と設備改修のポイントで詳しく解説しています。
「結露が止まらない」「天井にシミが出てきた」——そんなお悩みがありましたら、まずはお気軽にご相談ください。ヒアリング後に天井裏の調査で原因を特定し、最適な対策をご提案いたします。
お問い合わせは弊社ホームページよりお待ちしております。
